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【ネタバレ】小説『パラレルワールド・ラブストーリー』感想

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小説「パラレルワールド・ラブストーリー」の表紙

東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」|講談社文庫

2019年5月31日に映画が公開される「パラレルワールド・ラブストーリー」。予習も兼ねて原作である東野圭吾の小説を読了したのでその感想記事です。一言で言えば、無難におもしろいけど東野作品の中では設定が甘かった気がする。何がおもしろかったか、何がイマイチなのか、それを詳しく書いてみたいと思います。尚記事途中からネタバレを含みます

目次

以下ネタバレ含む

あらすじと基本情報

講談社BOOK倶楽部より引用 親友の恋人は、かつて自分が一目惚れした女性だった。嫉妬に苦しむ敦賀崇史。ところがある日の朝、目を覚ますと、彼女は自分の恋人として隣にいた。混乱する崇史。どちらが現実なのか? ――存在する二つの「世界」と、消えない二つの「記憶」。交わることのない世界の中で、恋と友情は翻弄されていく。

要約すると

主人公・崇史のふたつの世界、つまりパラレルワールドが平行して進んでいく。一方では麻由子と恋人同士であり、もう一方では麻由子は親友の智彦と恋人同士である。前者では2つの世界の相違矛盾に苦悩し、後者では麻由子への愛情と親友への嫉妬に狂う。そして徐々に相互世界の関連性と謎が明らかになっていく。ちなみに各世界ではそれぞれ語り手の主体が一人称と三人称で異なるのがまた印象的。

攻殻やマトリックスとの共通事項

三人(崇史、麻由子、智彦)は世界をリードする最先端コンピューターテクノロジーメーカーのバイテック社(現在のGoogleのようなイメージ?)の研修生という形で英才教育を受けつつ仕事に従事している。バーチャルリアリティ、記憶改変などのワードが出てくることから攻殻機動隊やマトリックスなど「仮想現実もの」との共通項も伺えるが、この手のジャンルを東野圭吾の得意とする電子工学分野からの独自の観点で切り開いた作品とも言える。

基本情報

1995年に中央公論社より単行本が発売され、1998年に講談社より文庫本が発売。「このミステリーがすごい!」で1996年に24位にランクインした模様。そして2019年5月31日に映画公開が決定している。

さすが電子工学系作家

仮想現実とか記憶改変とか中途半端な設定ではストーリーがしょぼくなるだろう。それを素人目にもうるさくならない程度に適度に専門用語を並べ、作品にリアリティを持たせることに成功している。さすが電子工学の分野を専門としていた東野圭吾だ。リアリティを追求するあまりに、本編と離れすぎて読むのが苦痛になるパターンは小説あるあるだが、かと言って専門家に突っ込まれるのもこわい。この辺の塩梅が東野作品は絶妙だ。

先が気になってしゃーない

いきなり主人公の置かれた環境を唐突に変えられると先が気になる。この小説で言えば何故さっきまで親友の恋人だった女が主人公の恋人になってんだ?っていう。他に例を挙げるなら、「白夜行」で次の章から全然別の人物視点で始まって「誰なんだこいつは?」みたいな。そして微妙に本編との共通点とかを小出しにしてくるところが憎い。当作でも健在だ。

以下、ネタバレを含みます。

序章の電車の伏線に不満

不満点と銘打ったものの同時に好きなシーンでもある。平行して走る電車で互いに気にし合う男女という非常にロマンティックな描写だが、何かここに重要な伏線があるはず!と期待感が増幅した分、さして本編に影響していないという結末に肩透かしを食らった。というか省いても問題のないシーンとまで言える。いや、それは言い過ぎか。確かに崇史の麻由子に対する特別な想いの説明はつかないし、パラレルワールドを示唆する役目もあると言えるが、逆に言えばそれだけ、という印象。

麻由子が智彦の恋人になった理由について

明確には書かれていない。この辺は曖昧にされていて同情も含まれているという崇史の推察通りだったのだろうが。

麻由子が崇史の恋人になった理由について

要は第一の動機が組織の人間としての監視であり、第二の動機が女としての彼と彼の親友を想ってのことだったのであろうがよく考えてみてほしい。序章で見知っていた崇史と出会ったことで心は揺れ動き、智彦が本物の恋愛対象でないことに気づきながらも同情もあって別れられず、崇史にストーカー&レイプまがいのことされても好きだから許し、夫婦まで演じちゃう女と解釈できる。改めて書いてみるととんでもねえ女だなおい・・・。

未知数という言葉で全て片付く

「崇史に事情を全ていきなり話してしまうのは、脳にどんな悪影響があるかわからなくて危険だからできない」ていうのも全て未知数の脳科学分野で何が起こるかわからないからという理由で片付けられる非常に便利な設定だ。研究員を廃人にしておいてめちゃめちゃ切羽詰まっているはずのバイテック社が、崇史に自分から記憶が戻るよう環境を構築して待つというそっちの選択肢の方が非合理的にも思えるが・・・。

下手したらこれはラブストーリーではなく

智彦は自分の意思だからまだしも、篠崎が廃人化したのは完全なアウトだ。要するに殺人(未遂)であり、人体実験であり、それを隠蔽しようと奔走する関係者達の物語という捉え方もできる。篠崎は様々な偶然が重なったことによる不幸らしいが、これ出るとこ出たら世紀の大スキャンダルですぜバイテックの皆さん。美しいラブストーリーのように見えるが捉え方によっては犯罪隠蔽ストーリーだ

まとめ

以上のことから、個人的には伏線回収と辻褄合わせの達人=東野圭吾という印象を持っているが当作品はどっちかというと設定が甘い方に属する。小説原作の映画化はただでさえ失敗が多く、ストーリー再構築が難しいので今から出来が不安ちゃ不安だ。とはいえ、個人的には手紙や白夜行ほどの名作とまでは呼べないが、結末まで気になってしょうがない中毒性は健在の良書。映画公開前に是非ご一読を!

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