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【ネタバレなし】『キングダム』感想|キッズ向け映画!

キングダムのポスター

原泰久/集英社 2019映画「キングダム」製作委員会

『キングダム』基本情報

原作は週間ヤングジャンプで連載中の人気漫画「キングダム」。実写映画化され、2019年4月19日に公開。ストーリーは漫画の1~5巻中の「成蟜(せいきょう)の反乱編」となっている。原作のストーリーは主に司馬遷の史記などをベースに創作されている。漫画は2019年4月現在で53巻まで発売している。

原作漫画の魅力

私も映画公開に伴って53巻まで一気に読破したのだがおもしろい。大雑把に魅力を上げると下記のような部分だろう。

  • ● 下僕の出身でありながら天下の大将軍になるという
  • ● 格上の大将格を倒して位が上がっていくという成長
  • ● 飛信隊の隊員との友情
  • ● 史実ベースであるが故にリアルで凄惨な死闘感

夢✕成長✕友情は多くの少年漫画と共通する部分でもあり王道だ。ワンピースに例えれば夢=海賊王・成長=懸賞金・友情=麦わらの一味。しかし史実に基づく歴史漫画という点で差別化がなされており、死闘感や戦場のリアル感もある。 この夢✕成長✕死線✕史実という掛け合わせがオリジナルな魅力だ

あらすじ

集英社ヤングジャンプ公式ページより引用

時は紀元前、春秋戦国時代。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は500年もの動乱期。 戦国七雄の一つ「秦国」の身寄りのない少年・信と漂は、今は 奴隷のような身なれど、いつか武功をあげて天下一の将軍になることを夢見て修行に励む。そんな二人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから運命の歯車が動き出す!

要約すると

主人公は奴隷身分でありながら天下の大将軍に成り上がることを夢見る若者で、後に秦の始皇帝となる政と出会い、共に成長していく物語。劇中では弟である成蟜が王都咸陽(かんよう)でクーデターを起こし、それを奪還すべく死闘を繰り広げる。

2時間半という枠によくまとめている

漫画の5巻分を二時間半にうまくコンパクトにまとめてある。「ガンツ」や「いぬやしき」の監督を務めた佐藤信介、脚本の黒岩勉を中心にして脚本が練られ、そこに原作者の原泰久さんがアドバイザーとなって完成したそうだ。

参考記事:原泰久さんインタビュー

正直、正確なストーリーは漫画を読んでないと解りづらい。似たような中華名ばっか羅列されて誰が誰なのか少ない説明でよくわからないだろう。しかしそこは大して問題ではない。華やかな演出や個性溢れるキャラクター、かっこいいバトルアクションがこの映画の最大の魅力だからだ。

夢と希望の少年向け映画

原作は青年誌のヤングジャンプだが映画は少年向けに創られた印象を受けた。 原作では、強烈な個性と夢を持つ主人公の成長物語という少年誌ぽさはあるものの、リアルな殺し合い、死闘感という青年誌ぽさも併せ持った魅力がある。 一方、映画は完全に少年向け。夢や成長がテーマという部分では同じものの、バイオレンス表現は皆無。爽やかで華のあるキャスティング、かっこよくて派手なアクション、コミカルなキャラクター、極端に抑えられた流血表現。これはむしろ戦隊モノ・ヒーローものとして考えたらしっくりくる。 少年世代にはウケがよさそう。逆にリアルな戦場感、死闘感を期待したらがっかりするだろう。

キャスティングの印象

信:山崎賢人

役作りで漫画の信に近い細マッチョ的な体型を作り上げたそうだ。肉体だけ見るとそれは成功していると思うけど、少々無理をして破天荒さ、剛気さを演じている感があり、漫画の信のもつ天然の野性味を出すにはちょっと爽やかすぎる俳優さんだなと思った。原作では李信がモデルだと作者も公言している。李信が史実で登場するのは劇中よりずっと後であり、現在漫画で描かれている信の大部分は創作だと思われる。

政:吉沢亮

そもそも見た目が割とイメージが近いのだが、政の一見クールでありながらも熱く胆力あるハートを持つ秦国大王としてはマッチしていたように思う。 史実では言わずとしれた史上初の中国統一を成し遂げた秦の始皇帝だ。漫画原作では、連載前は政が主人公になる予定だったそうだ。

楊端和(ようたんわ):長澤まさみ

いい意味で一番裏切られた。私のイメージでは、長澤まさみは美女というよりかわいい系でかつ高めの声を持つというイメージで、どうしても原作の山民族を束ねる"死王"の異名を持つ女王・楊端和とイメージが合わなかったが、セリフ一言一言に風格を感じさせる重みがあり、その女優としての引き出しの多さに感嘆した。ちなみに史実では楊端和は秦の将軍のひとりであり、山民族でも女性でもないそうだ。

河了貂(かりょうてん):橋本環奈

先にも書いたようにターゲット層を考えれば橋本環奈で間違いないと思う。間違いないと思うが私のようなリアル志向な老害おじさんには違和感でしかなかった。戦場にいながら泥臭さとは無縁のその容姿と風貌にコミカルなキャラクター、ダンボールでつくられたようなきぐるみ。いや漫画を忠実に再現できていると思うよ。思うんだけど・・・以下略。 原作だと序盤はまだ子供で、女性というより少年であり、進行に伴ってより女らしく、また軍師としても才能を発揮していくので、映画にも続編があるとすればその辺の変化の表現が楽しみだ。

成蟜(せいきょう):本郷奏多

公開前から話題になっていたがまさに漫画の成蟜のキャラまんま。この人しかいないよね。こういう小物感漂う悪役というのは。

王騎:大沢たかお

大沢たかおは何も悪くない。何も悪くないぞ・・・。素晴らしい演技と役作りをされてたと思う。しかし、王騎を実写でまんま表現するということに無理がありすぎる。これはインタビューで原泰久さんも言っていたがそもそも王騎は人が演じられるものではない。信が眼前を歩く王騎に圧倒されるシーンとか迫力感じなくて白けた。ブロック・レスナーとかじゃなきゃ無理だろ。

まとめ

原作読んでいる方がストーリーは理解できるが、読まない方が映画は楽しめるんじゃないかとまで感じた。それだけ原作とは印象に差があり、それは長所でもあり、短所でもある。即ち原作のような死闘感はないものの爽やかでイケメンでアクロバティックなアクションは楽しめるというものだ。だから漫画読んでから観ようとしている人は先に映画観ちゃうことをおすすめする。 次回作の可能性もあるそうだ。もう麃公(ひょうこう)とか龐煖(ほうけん)とか出てきたらプロレスラー呼ぶしかない。楽しみなのは河了貂と並ぶ二大ヒロイン、羌廆(きょうかい)の存在だ。美女でクールな剣術の達人。今からキャスティングも楽しみだ。

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