2019年8月23日公開のアニメ映画『二ノ国』感想記事。百瀬義行監督がジブリ出身ということを全面にプロモーションしているが大丈夫か?ハードル上げすぎてないか!?ということでその完成度の程を曇りなき眼で確かめてまいり、綴った拙文であります。尚、ネタバレはなし。
『二ノ国』作品情報
製作国 | 日本 |
ジャンル | ファンタジーアニメ |
日本公開日 | 2019年8月23日 |
監督 | 百瀬義行 |
キャスト
- 【ユウ】山﨑賢人
- 【ハル】新田真剣佑
- 【コトナ / アーシャ】永野芽郁
- 【ヨキ】宮野真守
- 【サキ / ヴェルサ】坂本真綾
『二ノ国』あらすじ
頭脳明晰で、心優しい秀才のユウ。
バスケ部のエースのハル。
そしてハルの恋人コトナ。
同じ高校に通う幼なじみの3人は、かけがえのない親友だった。突然の事件が起きるまではー。
ある日突如ユウとハルが迷い込んだ見知らぬ場所、そこは想像を超えた魔法の世界「二ノ国」。
現実(一ノ国)と隣合わせにある、この美しく不思議な世界で、
2人はコトナにそっくりなアーシャ姫と出会う。
どうやら二ノ国には、一ノ国と命が繋がっている”もう1人の自分”がいるらしい。
アーシャ姫に死の呪いがかけられたことをきっかけに、ユウとハルはふたつの世界に残酷なルールがあることを知る。二ノ国で尽きるはずの命を救えば、一ノ国の人間がその代償を払うことになるというのだ。
そして二ノ国ではアーシャ姫が、一ノ国ではコトナが、死の呪いにかけられていたー。
ふたりの彼女、救えるのはひとつの命ー
明るく健気なアーシャ姫を守りたいユウと、コトナを助けたいハルに突きつけられた残酷なルール、ふたりが下した〈究極の選択〉とはー。
「愛する人を救うために〈命〉を選べ。」
公式サイトより引用
『二ノ国』感想
曖昧でややこしい設定
2つの世界の命が繋がっているのか、それともどちらか一方でしか生きられないのか曖昧な上、物語の中でも二転三転し、その度にくどくどとキャラクターのセリフで説明されることが多いのでややこしいわかりにくい面倒くさい。
セリフに依りすぎると頭でワンテンポ考えなければならない分、感情移入しづらい。映像作品なのだから、絵や動きで観客に伝える試みやバリエーションがもっとあればより伝わりやすくなるのではないか。
最近多い「異世界転生系」
世知辛い世の中からの脱却願望ゆえなのか、現代世界からファンタジーな異世界に飛ばされる類の作品がこの頃は多いように思われる。代表的なものだとやはり『千と千尋の神隠し』であろうか。記憶に新しい『バースデーワンダーランド』もそうであった。
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この手の作品は異世界に飛ばされて元の世界に戻ることが目的になることが多いのに対し、この作品はコトナ/アーシャを救うということが最大の目的となる点にオリジナリティを見出しているものの、やはり頻繁に2つの世界を行き来ができてしまうことが逆に緊迫感を失うことになっている感はある。というのも、一方の世界に閉じ込められることで元いた世界が恋しくなり、ホームシックに陥り、家族、友人、あるいは恋人は今頃どうしているのだろうという元いた世界への切望の念が強くなるからだ。ある意味こういった異世界転生ものでは珍しい類のストーリーかもしれない。しかしやはり最終的に元いた世界に帰結した時の感動は薄い。
キャラクターのデッサンとアニメーションが雑
特にキャラの顔の角度が素早く変わる動きに顕著だった。
キャラクターは基本的にCGなどの処理ではなく、手描き・手作りアニメーションでつくられているようだがセル画枚数が足りていないのか、やけにカクついたぎこちない動きが随所に目立っていたようにも感じた。これは映画ではなく、TVシリーズものとして放送できる程度のレベルではないか…とまで思った。
CG背景と手描きキャラとの融合が不十分
王国と城下町の俯瞰描写、幻想的に光る湖畔、酒場での料理の描写など、背景美術に関しては素晴らしいクオリティだと思った。ユウとアーシャを乗せて飛び立つ船などにみられる3Dモデルと繊細な絵画タッチとの融合も綺麗になされていた。
しかし、違和感が凄かったのはモブ(兵隊などの群衆)やモンスターである。それらは随所で3DやCG処理がベースになっており、これが手描きキャラとのタッチの差が激しい。作業効率化を試みたのだろうがせめてモブの戦闘シーンはじめ、キャラクターはすべて手描きタッチで統一されるべきだと思わされた。もしくは3D処理をするならするで3Dモデルにもアニメ調や手描き調のタッチを妥協なく追求すべきだ。一昔前にメカもののTVアニメにみられたような、3Dがはっきりと3Dだとわかってしまう位にはこの映画にも違和感があった。
まとめ
ウチダ評価
5点満点中1点:
個人的には今年に入ってワースト3に入る勢いであった。
「無駄遣い」と過激な言葉で銘打ったが正直な感想である。さらに言えば山寺宏一はじめ、声優陣も無駄に豪華だと言わざるを得ない。
良いストーリーは、一流の絵や音楽やキャスティングとの融合によってその魅力は何倍にも昇華されるものだという認識には誰も異論がないだろう。しかし、その逆もまた然りだということを再確認。いくら着飾っても変わらぬものもある。残念。