2019年8月9日に日本で公開されたディズニーによるフルCG映画『ライオン・キング』の感想記事。現実世界を超える程の動物達の作り込みで超絶リアルな映像とは裏腹に、ディズニーであるが故に、必然ではあるが、ややアンリアルな要素も見られた。そんな良かった面も微妙だと感じた面も含めて徒然と書きます。尚、感想部分にネタバレあり。
『ライオン・キング』作品情報
製作国 | アメリカ |
ジャンル | ディズニー・フルCG |
日本公開日 | 2019年8月9日 |
監督 | ジョン・ファヴロー |
キャスト
- 【シンバ】ドナルド・グローヴァー/賀来賢人
- 【幼いシンバ】JD・マックラリー
- 【ナラ】ビヨンセ・ノウルズ=カーター/門山葉子
- 【幼いナラ】シャハディ・ライト・ジョセフ
- 【ムファサ】ジェームズ・アール・ジョーンズ/大和田伸也
- 【スカー】キウェテル・イジョフォー/江口洋介
- 【ティモン】ビリー・アイクナー/ミキ・亜生
- 【プンバァ】セス・ローゲン/佐藤二朗
- 【サラビ】アルフレ・ウッダード/駒塚由衣
- 【ラフィキ】ジョン・カニ/駒谷昌男
- 【ザズー】ジョン・オリバー/根本泰彦
- 【シェンジ】フローレンス・カサンバ/沢城みゆき
- 【アジジ】エリック・アンドレ/白熊寛嗣
- 【カマリ】キーガン=マイケル・キー/加瀬康之
『ライオン・キング』あらすじ
命あふれるサバンナの王国プライドランド。その王であるライオン〈ムファサ〉に、息子〈シンバ〉が誕生する。だが、シンバはある“悲劇”によって父ムファサを失い、王国を追放されてしまう。新たな世界で彼は仲間と出会い、“自分が生まれてきた意味、使命とは何か”を知っていく。王となる自らの運命に立ち向かうために―。
公式サイトより引用
『ライオン・キング』感想
現実を超えた映像!
映像の凄さはメディアで話題になっている通り、実写と何ら遜色ない、いやそれ以上である。まるで現実のサバンナをまるごと撮影し、より映画的に誇張して仕上げたかのようなすごすぎる映像美。
特筆すべきは、本来の動物がやらないような仕草まで違和感なく作られているところだ。
「吠える、叫ぶ、食べる、走る」などは本物の動物を参考にできる(もちろんそれでさえ超繊細な作業が必要)。が、参考にできない仕草「話す、歌う、笑う」など、想像力も必要とされる動作まで違和感なく、卒なく、精巧に、繊細に作り込まれている。超リアル躍動感は必見。IMAXだと尚良い。
もちろん、本来の動物の仕草も、細かい部分まで非常によく観察されている。例を挙げれば、序盤にシンバとナラが、決して近づかぬよう釘を刺されていた場所(ゾウの墓場?)でマグマのような泡立つ液体が飛沫をあげてシンバの顔にかかった瞬間、あの反射的に顔をブルブルする仕草、あーこれ普段も猫とかでも見られるやつだー、という、リアルでありつつも親しみのある躍動感を感じることができる。
シンバに現代日本社会との共通要素を見た
舞台はアフリカのサファリだが、様々な場面で現代社会に通づるメッセージがあったように思う。少なくとも日本の都内近郊で社会に揉まれつつもがき苦しんでいた(苦しんでいる?)私の心にはダイレクトに響く言葉があった。例えばムファサが死亡した場面で、シンバはスカーから「お前のせいだ」と責められ、そう言われると思い当たる部分のあるシンバの心には突き刺さり、地獄に突き落とされるのである。その後、新しくシンバのホームとなった彼の地では、くよくよするだけ無駄であることを教えられ、ある意味逃避ともいえるがシンバは立ち直っていくのである。
まるで人にどう評価されるかで浮き沈みしやすい日本人的気質を突かれているかのように感じたのは早計だろうか。些細なミスでもそれっぽい偉い立場の人に「ありえねーミスだわ」を言われれば極限まで落ち込むが、また別のベテランに「いや、自分も昔同じミスしてたし全然普通だよ。気にするだけ無駄」と言われれば、なあんだそうかとさっきまでの世界の終わりかのような絶望感が嘘のように晴れ渡る過去の自分を見ていたかのようだ。と、予想外の部分で涙腺を突かれてしまった。IMAXメガネ越しに一人涙を流すおっさんなのであった。
バイオレンス表現が皆無なのは是か非か
現実であればバイオレンスの極致とも言えるのが野生の世界というものであろう。日々、食ったり食われたりの生死と隣合わせの世界に生きているからである。そんな現実には反して、この作品ではバイオレンス表現はほぼ皆無。老若男女、とくに小さな子にもみられるよう意識されているのはディズニーたる所以だが、野生動物、特に肉食動物の決闘、噛んで引っ掻いて殺し合う場面で血が一滴も流れない。超絶リアルで精巧につくられた動物達でありながら、その部分に関しては全くリアルではないという、やや不自然であり、また迫力に欠ける印象を受けた。特に最終決戦。ただでさえバイオレンス表現の制限で迫力に欠ける上、割とあっさりスカーがシンバに倒されるので物足りなさを感じる。もうひと波乱あってもよかったかな~なんて素人ながらに思う。
終わりに
ウチダ評価
5点満点中3点:
起承転結の明確なわかり易いストーリー、ファニーで可愛い魅力的なキャラクター達、最先端CG技術による素晴らしい映像美、総合的に捉えれば万人に受けるであろう良作と言えるであろう。