2019年4月26日公開『アベンジャーズ/エンドゲーム』。公開初日にIMAXで鑑賞してきました。
過去作を観ていなくても楽しめるのか? 過去作を観るならどの作品か? 今作の感想や見所は?
といった部分に焦点を当てております。
また、より内容や魅力が伝わるよう、読みやすくなるよう、今作にまつわるイラストをパロディ風に作成し、各所に挿入しております。
(注)後半にネタバレを含みます。
ちなみに私はマーベル・シネマティク・ユニバース(MCU)過去21作品の内で鑑賞したのは8作のみ、しかも原作は読んでいません。 どの作品も随所に過去作の伏線や小ネタが散りばめられていて、初心者の私にとってそれらは初見で理解するにはノイズとなり、ストーリーが難しいと感じ、これはマーベルファンか、過去作をしっかり観ることが前提の作品郡なのかなと思っていました。しかしそんな私でも今作は自信を持って言えます。
これは傑作です。
過去作を観ていなくても楽しめるのか?
いきなりこの作品から観ると理解するのは難しいと思われます。何故なら前作である『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)が言わば今作に対して前編となっており、直接的にストーリーが繋がっているからです。なので最低でも『インフィニティ・ウォー』だけは観ておくことをおすすめします。もちろん随所に過去21作品全ての伏線やネタが散りばめられており、より楽しむにはさらに多くの作品を観ておく必要があります。
過去作を観るならどの作品か?
5作品に絞るならば、以下をおすすめします。
- 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)
- 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)
- 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
- 『アイアンマン』(2008)
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はひと続きのストーリーになっており、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は今作ラスボスであるサノスの背景が描かれているからです。また、『アイアンマン』はMCUの記念すべき初作品で、シリーズにおけるヒーロー達の中で最も主軸のキャラと言えるトニー・スタークの原点であり、今作『エンドゲーム』においても重要な伏線が内包されているからです。
エンドゲームのここがおもしろい!
見所1:ユーモアのぶっこみ加減が絶妙
過去作と比べても笑いを誘われる場面が多い。序盤はコンスタントにユーモア溢れるシーンが続き、かといってコメディ路線に偏重しすぎず、むしろユーモアがあるからこそシリアスなシーンも引き立つし、観客をより物語に引き込む良い効果を出している。
見所2:各キャラのアップグレード部分
一部のキャラはダウングレードと言えるかもしれないが笑 各キャラの髪型や容姿、武器も加えられたりなど変更点も従来のファンにとっては楽しめる要素のひとつだろう。この項ではまだネタバレは伏せるが、あのキャラが使ってたはずの武器をあのキャラが!?とか中には誰だかわからないほど変貌しているキャラもいたりする。
見所3:全ての伏線がきっちり回収される
過去21作品、年数にして10年という長きに渡った伏線はこの22作品目を持ってきっちり回収される。 トニーの捻くれたキャラも、キャプテンとの確執も、前作でのストレンジの行動も。数多くの作品の失敗にあるような、伏線を張りすぎて未回収のまま、モヤっとして終わるということはなく、誰もが納得のいく結末であろうことは間違いない。
見所4:皆大好きアライグマ
笑いの要素含め、作品を何倍も魅力的にしている大きな要素のひとつがアライグマことロケットかと個人的には思う。MCU初登場は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』だが、このような愛嬌があって個性的なキャラがいることで誰もが容易にストーリーに引き込まれるだろう。ストーリーがいかによくできていてもキャラが薄いと没入感が損なわれるものだ。そして今作品、ロケットの見せ場は多く、アライグマファンとしては嬉しい限り。
こっからネタバレ感想
ざっくりストーリーを追いつつ、印象に残ったシーンを取り上げていきます。
序盤:絶望
『インフィニティ・ウォー』でのサノスの前に為す術もなく敗れ、残された各ヒーロー達の現状説明的な序盤。
久々のホークアイ
いきなり前作にいなかったホークアイのシーンから始まり、ファンにとっては心躍ったことだろう。しかし彼が家族が消えてしまったことを知るという悲しいシーン。
マーベル登場
前作のラストでフューリーが消える直前に呼び寄せていたキャプテン・マーベルがここで登場。宇宙空間に取り残されたトニーとネビュラの宇宙船まで単身向かっていき、地球まで引き戻してくるといういきなりの大仕事をやってのける。サノスに皆が負けたのも自分がいなかったからだという発言にも伺えるように自信に満ち溢れてSっ気満点なお姉さま、最高です。
トニーとスティーブの確執再び
前作での惑星タイタンにおけるサノス戦でどうにもできなかった不満をスティーブにぶちまけるトニー。トニーめんどくせーと思わず言いたくなるが、この長きに渡って繰り返されてきた確執も、全ては伏線であった。それは今作の終盤で明らかになる。
えっ?もう殺っちゃうの?
サノスの居場所を突き止めるもインフィニティストーンはもう必要なくなり、原子レベルに分解して消し去られたことが判明。そしてソーがサノスの首を一刀両断。えっ?もうここで?って誰もが思っただろう。ラスボスであるはずのサノスがここで死んだら戦う相手もういないじゃんていう。そしてサノスは倒せど、仲間を取り戻す手段はもはや残されていないという絶望が皆を襲う。
お前ら、どうして・・・
その後、更に月日が経ち、唯一の希望がタイムトラベルにあるという一縷の希望を見出すが、メンバー再結集のために仲間に会いに行くと各キャラの変貌ぶりに突っ込まずにはいられない。
バナー、お前どうして・・・
ハルクを通常時でもコントロールすることに成功したバナー。それはさしずめ、超サイヤ人を普段の状態へと制御化したセル戦前の悟空と悟飯のようだ。
クリント、お前どうして・・・
日本で真田広之が演じるヤクザ相手にチャンバラを繰り広げるクリント。ぎこちない日本語に「このシーンいる!?」と突っ込みたくなったのは言うまでもない。今思い返してもこのシーンだけやっぱ浮いている気がする。
ソー、お前どうして・・・
サノスの名は口にするな!と凄むほど最初はストーン奪還作戦を拒んでいたソーだがアライグマの「俺の船にもビールはあるぜ」の一言でなびくソー。もちろんこれが改心の根本的な原因ではなく、ずっと過去を引きずって燻っていたということだろう。しかしあれだけマッチョでイケてたアスガルドの王子の変わり果てた姿に劇場でも笑いが起きていた。
中盤:タイムトラベル作戦決行!
過去にタイムトラベルし、インフィニティ・ストーン奪還作戦を実行に移すアベンジャーズ。ただでさえ多いヒーロー達のシナリオに宇宙が絡み、さらには時系列まで加わって混乱しそうになるが、同キャラ対決や肉親との遭遇などタイムリープものならではの楽しめるシーンが満載でわくわくせずにはいられない。
2012ニューヨーク(タイムストーン、マインドストーン)
- トニー
- スティーブ
- バナー
- スコット
2013アスガルド(リアリティストーン)
- ソー
- ロケット
2014モラグ(パワーストーン)
- ネビュラ
- ローズ
2014ヴォーミア(ソウルストーン)
- ナターシャ
- クイント
1970ニュージャージー(スペースストーン)
- トニー
- スティーブ
トニーの意識の転換点:ピーターの存在
娘ができ、幸せな家庭を気づいたトニーは再び戦いに身を投じることを拒む。しかし独自でタイムトラベル用装置を研究、開発する。この意識の変化のきっかけとなったのはピーターの存在。トニーとピーターが一緒に写っている写真を眺め、消えていった彼に思いを巡らせる。これが終盤、ピーターとの再会シーンへの伏線にもなっている。そしてスティーブと握手を交わし、再び共に戦う決意をしたトニー。
複雑なタイムトラベルの設定が説明されるシーン(ニューヨーク)
バナーとエンシェント・ワンの会話で明かされる。過去に行って歴史を曲げると今いる未来にも影響する的なタイムリープものによくある設定ではなく、過去は過去、未来は未来で隔絶されたパラレルワールドのようなものだということがわかる。まさにドラゴンボールのセル編。そしてストレンジがサノスにタイムストーンを渡した経緯を説明することで、エンシェント・ワンも、ここでストーンをバナーにわたす事がストレンジの考えであることを悟る。
キャプテン対決(ニューヨーク)
ヒドラに合言葉を告げ、難なく杖の奪還に成功するスティーブ。しかしそこに過去スティーブが現れ新旧キャプテン対決勃発。現スティーブは追い詰められるが「バッキーは生きている」の一言で相手を怯ませるという面白い一幕も。
感づくサノス(モラグ)
どういう原理なのか解らないが、過去ネビュラを経由して現ネビュラのメモリーをハッキングし、アヴェンジャーズの意図に気づくサノスとガモーラと過去ネビュラ。マーベルシリーズとは宇宙規模で展開する壮大すぎる物語、もはやどんな設定を施してどんな展開にでもできるのです。
俺たちのナターシャが・・・(ヴォーミア)
愛する者を犠牲にしなければ手に入らないソウルストーン。前作「インフィニティ・ウォー」でサノスとガモーラの下りが今作ではナターシャとクイントの間で起きる。当然のようにどちらかが犠牲になることで揉めるがその決着点は互いに自分が犠牲になるのだと主張しあい、力づくで決行しようとすることで観客にも納得の行くように動機付けがなされている。とはいえここでメインキャラの一人であったナターシャが死亡、離脱。俺たちのナターシャが・・・俺たちのおっぱいが・・・・
トニーと父、スティーブとペギー(ニュージャージー)
難なく四次元キューブとピムの回収に成功するトニーの前に偶然にも若かりし頃の父・ハワード・スタークが現れる。これからこの時代に生まれてくるトニーについて言葉を交わす二人。更にスティーブはペギーを見つけ、想いを馳せる。ラストシーンに繋がる重要なシーン。
ソーと母(アスガルド)
ジェーンからストーンを回収することに成功するアライグマことロケット。しかしソーは母に速攻で見つかってしまう。この後母が亡くなることを知っているソーは涙を流す。息子の事情を全て悟った母はソーを励まし、送り出す。
終盤:最終決戦~そして・・・
それぞれストーンを回収して再び戻ってきた面々。ハルクがトニーの作成したガントレットにストーンをはめ込み、指ぱっちん。作戦は成功したように思えたが・・・。早い段階でサノスを倒してしまってラストバトルの要素はいずこに?となっていたが胸熱な展開が待っていたんですね。
サノスの目的アップデート
全生命体の半減 → 半分ではなく全て滅ぼすにアップデートされたことが解る重要なシーンだ。結局アヴェンジャーズのような生き残りが何度でも立ち向かってくるからキリがないということを言っている。
アヴェンジャーズアッセンブル!
甦ったヒーロー達がストレンジ達の魔法によって集結。一方サノス陣営も戦力を総動員して攻勢を図る。キャプテンの名台詞で最終決戦の火蓋が切られる。 更にここでテーマ曲が流れ、鳥肌必至。
キャプテン、お前どうして・・・
ここでキャプテンの新武器登場。ソーが持ってきたハンマー、ムジョルニアを自在に扱い始めるスティーブ。エイジ・オブ・ウルトロンで持ち上げかけた伏線がここで繋がる。
ワンダとマーベルの戦闘能力の高さよ
ワンダのサイコキネシスが一層強化されて目を煌々と赤く光らせ、サノスを翻弄する。さらに単身で敵船を破壊し尽くし、ソーやキャプテンでも敵わぬサノスとも互角に渡り合うマーベル。主要男性キャラよりこの二人の方が全然強い印象があった今作。
アイアンマンに始まりアイアンマンに終わる物語
頑固でわがままでめんどくさいこれまでのトニーの描写が全てここのためにあったのだ。屁理屈の多かった彼が、最後は言葉を発せず、無言で力尽きていくという対比がより感動を呼ぶ。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)初作品であり、名作『アイアンマン』を改めて鑑賞し、設定や演出に注目して記事 ...【ネタバレ】映画『アイアンマン』ストーリー考察|設定や演出を分析
まとめ
笑いあり、涙あり、迫力満点のアクションあり、映像とエンターテイメントにおける不可欠な要素が網羅され、しかもこれだけ多くの主人公キャラを魅せるのは相当にストーリー創作の難易度も上がると思いますが、だれることもなく各キャラをしっかり立てている、紛うことなき傑作です。 そしてできるならIMAX、最低でも映画館で、モニターやテレビはもちろん、タブレットやスマホで観るにはさすがにもったなすぎる映画なのは間違いありません。是非お近くの映画館で、10年22作品にも渡った感動巨編の結末を多くの人に観て頂きたいと思いました。