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映画【空母いぶき】原作の漫画と比較!【佐藤浩市氏炎上】私見

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「空母いぶき」のイラスト

2019年5月24日公開、映画『空母いぶき』、原作のかわぐちかいじ氏の漫画と設定の違いを比較してみた。

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『空母いぶき』【作品概要】

映画『空母いぶき』

監督 若松節朗
原作・監修 かわぐちかいじ
脚本 伊藤和典
長谷川康夫
製作国 日本
公開日 2019年5月24日
出演者 西島秀俊
佐々木蔵之介
藤竜也
戸次重幸
市原隼人
工藤俊作
千葉哲也
和田正人
玉木宏
横田栄司
高嶋政宏
横田栄司
佐藤浩市
本田翼
小倉久寛

原作

作者 かわぐちかいじ
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミック
巻数 既刊12巻

空母の写真

 

『空母いぶき』【設定比較】

相手国

映画 原作
国籍不明の武装集団 中国

原作だと日中会談や相手国要人との交渉シーンも頻繁に出てくるが、映画だと敵国側の描写はほとんどないとのこと。

劇中の時間経過

映画 原作
クリスマス・イブの24時間 一年以上

映画はクリスマス・イブの24時間だけの物語なのに対し、原作は最初の中国工作員尖閣上陸からいぶき就役までで一年経過し、更にその後の戦闘も数時間~数日単位で時間が経過していく。

新聞記者

映画 原作
東邦新聞 東都新聞

原作では東都新聞・一の瀬という記者が、映画だと東邦新聞・田中俊一(演:小倉久寛)になっていて、見た目も全然違う。原作の一の瀬は、垂水総理の状況によっては武力も辞さないという姿勢に対して批判的だが果たして映画ではどうか。

ネットニュース記者

映画の予告を見ると、本田翼の演じる本多裕子なる記者ががっつり主要キャラのようだが、原作には登場せず、その本多記者が所属するP-Panelというネットニュースメディア自体登場しない。原作はそもそも女性キャラが極端に少ない。12巻までで、主要キャラでは護衛艦「あまぎり」艦長・海老名洋子だけだ。映画には華やかさも必須ということで美女枠が用意されたのだろうか。

「空母いぶき」のイラスト

本田裕子(演:本田翼)イメージ

また、映画では本多裕子と東邦新聞・田中俊一が「いぶき」取材中に有事が起きるという設定のようだ。そのまま民間人を載せて戦闘が行われるのだろうか。現実であれば彼等の避難が最優先となるであろう。なかなか思い切った設定だ。

 

 

護衛艦隊群の名前

いぶき第五護衛艦隊軍の各艦の名称が「いぶき」を除いて全て違う。

映画 原作
  • はつゆき
  • あしたか
  • しらゆき
  • はやしお
  • いそかぜ
  • ゆうぎり
  • あたご
  • せとぎり
  • けんりゅう
  • ちょうかい

 

潜水艦の写真

 

『空母いぶき』【主要3キャラ比較】

秋津竜太(演:西島秀俊)

航空機搭載型護衛艦「いぶき」艦長

「空母いぶき」のイラスト

 

人物

元は航空自衛隊の戦闘機のりのファイター・パイロット。最年少で一佐へ昇格、「いぶき」初代艦長に任命される。キャラクターは冷静沈着、頭脳明晰、当意即妙。日本の軍事力保有に対する考え方は、新波と対をなす存在として描かれる。

本作のテーマである「武力の保有・行使」に対する考え方は、原作の第一巻に出てくる以下のセリフによくあらわれている。

漫画「空母いぶき」第一巻より引用

武器は目的に応じて進化更新を求められる。それを止めるということは、人間に呼吸を止めろと言うに等しく難しい。(中略)武器を制御できる、強い意志と力量を持つ人間であることを我々は世界に伝える義務を負っている

人類は武力からは逃れられず、拒絶するのではなく、受け入れてコントロールする力こそが重要であり、「いぶき」はそれを世界に指し示していくんだ、という決意が伺える。

映画『空母いぶき』予告編より引用

「我々が誇るべきは、国民に誰ひとりとして戦争犠牲者を出していないことだ。国民を守るために死ぬのなら、自衛官として本望だろう。」

映画の予告でわかる部分といえばこれくらいである。原作にはこのようなセリフはない。比較するような場面でもないのだが、それでも原作の秋津とは大分キャラが異なるような雰囲気を感じる。

 

新波歳也(演:佐々木蔵之介)

航空機搭載型護衛艦「いぶき」副長

「空母いぶき」のイラスト

人物

海上自衛隊の自衛官。原作ではトレードマークである無精髭だが、映画ではすっきりしている。物語冒頭の、中国の不当な日本領土への侵入、そして戦闘機の威嚇に対し、相手の要求通り、中国人の身柄引き渡しを行って譲歩する総理の姿勢に「今回も我々は勝ち戦でした。」と言う。このことから、必要以上の軍事力保有は戦争の危機に繋がり、衝突を回避するためならば敵国への譲歩もやむなし、という考え方が伺える。そのため、好戦的とも思える秋津の姿勢に対してたびたび懐疑的な眼を向ける。

漫画「空母いぶき」第一巻より引用

自衛隊に問われる覚悟はな、何があっても死にもの狂いで、戦争を阻止するその覚悟だ!!」

映画『空母いぶき』予告編より引用

「創設以来、一人も戦闘での死者を出したことがないのが、我々自衛隊の誇りだったはずだ。」

やはり原作にはこのようなセリフはない。秋津と同様、原作と大分キャラが異なる感はある。だとしても映画独自にうまくアレンジされていればいいんだけど・・・。

 

垂水慶一郎(演:佐藤浩市)

内閣総理大臣

「空母いぶき」のイラスト

人物

序盤は気の弱そうな発言が目立ち、頼りない印象を与えられるものの、物語が進むにつれ、頼りがいのある日本のリーダーへと変貌を遂げていく。

漫画「空母いぶき」第一~ニ巻より引用

「中国政府に打診を。遭難した中国漁民3名を引き渡す・・・と。」

「国民の生命と財産そして領土のどちらも失うつもりはない」

1つ目のセリフは物語冒頭、中国工作員が尖閣へ不当に上陸した時に、飛来した中国軍戦闘機からのミサイル威嚇をうけて発した命令である。2つ目は中国軍の魚釣島実効支配宣言を受け、発した言葉。尚、この後に自衛隊史上初の防衛出動を発令する。

この2つのセリフからもわかるように、物語が進行するにつれ、「不当な侵略や国民の生命を脅かす事態になるくらいなら武力行使も辞さない」という断固たる決意を見せる場面が増えていき、名実共に日本のリーダーへと成長していく。

映画『空母いぶき』予告編より引用

「日本は絶対に戦争はしないという国民との約束です」

やはり原作には出てこないセリフだが、序盤の及び腰を表現しているのであれば、まあよしとしよう。映画でも、物語の進行に伴ってどのような成長を見せてくれるか、期待している。

 

 

【佐藤浩市氏炎上】原作ファンとしての私見

問題となった発言は以下の部分。

インタビュアー:総理大臣役は初めてですね。

佐藤浩市:最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。

インタビュアー:総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いてますね。

佐藤浩市:彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます。

そして批判する人の意見は以下にまとめられる。

批判的な人の意見

  1. まるでやりたくない役を嫌々演じたかのような意見に違和感
  2. 「体制への抵抗感」という言い回しが、いわゆる左翼的な言動に感じる
  3. 「お腹を下してしまう首相」が安倍晋三首相の潰瘍性大腸炎を揶揄している

インタビュー全文を読んだが、結論から言うと、インタビュー自体よりもここまで騒ぎに発展したことに対して違和感を覚えた。

「体制」発言に対して

「体制」という言葉に違和感を持つ人は多いだろうことは予想できるけど、騒ぎ立てる程のことだろうか?しかし、百歩譲って意見は人それぞれだとしよう。ただ、インタビューもろくに読まず、あるいは原作もろくに読まず、反射的に著名人の言葉に反応して一緒に騒ぎ立てる様はあまりにダサすぎる。批判している人達は、自分の頭で考えてものを言っているのだろうか?

お腹を下してしまうという設定に関して

漫画「空母いぶき」第四巻より引用

私が下す命令で人が死ぬ。確実に…死ぬ。(中略)私は下せるのか、その命令を!!いや、果たしてそれは、正しいのか?

一国のリーダーとしての重圧に苦悩し、トイレで上記のセリフを言い、吐いてしまうシーンがある。

佐藤浩市氏の『ストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらった』というのは、ここに由来していると考えればわからなくもない。そして佐藤浩市氏はこうも言っている。

「ビッグコミック」5月25日号インタビュー記事より引用

「劇中では名実ともに『総理』になっていく仮定が描かれます」

これは正に原作の垂水総理そのものの姿であることは前述のキャラ比較の項にも書いた通りだ。だから原作に基づいた役作りの一貫なのではないか、と考える。

更にそれを差し置いても、安倍晋三首相の「潰瘍性大腸炎」にイメージがつながるという意見に説得力を感じない。なぜなら、言いださなければほとんどの人が考えもしないと思うからだ。これで駄目と言うのならば、総理と腹痛に繋がる表現は一切使えないことになってしまう。一種の言葉刈りのようにも感じる。安倍首相に失礼というのであれば、こうやって名前を出してまで騒ぎにする事のほうがよっぽど失礼のように思える

結論

以上のことから、佐藤浩市氏の役作りは揶揄ではなく、原作の垂水総理を彼なりに、忠実に表現しようとしたに過ぎないのではないか、という印象を受けた。

ちなみに、以下の潮匡人(評論家、航空自衛隊OB)氏の意見には禿同である。

 

F15戦闘機の写真

 

まとめ

漫画原作の映画化といえば、原作ファンからの批判はつきものだが、12巻分ものストーリーを二時間の枠に収める事自体にそもそも無理がある。だから多少のストーリーのアレンジは必須だと思うのでそこは多めに見ようじゃないか。

とはいえ、編集の問題だけではなく、敵国の設定を中国にしなかったというよりできなかった、という部分もあるだろう。大人の事情により・・。そうなるとストーリー大枠の相当な変更を余儀なくされたと思われ、地雷臭がするのは否めないが、後は神のみぞ知る、ただただ祈って(何をだ)本編の公開を待つのみ。(2019年5月22日投稿)

 

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