2019年6月28日公開『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、元々ヒーローものやマーベルが苦手であった私ウチダによる独断と偏見と悪意に満ちたあらすじ及び感想です。映画史に残る空前の大記録を叩き出したエンドゲーム、その後日譚である今作。果たしてその出来やいかに!?後半の感想部分にネタバレありです。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』作品情報
製作国 | アメリカ |
ジャンル | アクション |
日本公開日 | 2019年6月28日 |
監督 | ジョン・ワッツ |
キャスト
- トム・ホランド
- サミュエル・L・ジャクソン
- ゼンデイヤ
- コビー・スマルダーズ
- ジョン・ファヴロー
- ジェイコブ・バタロン
- マーティン・スター
- マリサ・トメイ
- ジェイク・ジレンホール
※()内は日本語吹替
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』偏見満載のあらすじ
MJゲットするぞ!ピーターの野望再び
修学旅行でヨーロッパへ!トニーを失った悲しみもほどほどにピーターはMJとの恋を成就させるべく、ネッドの協力を仰ぎながら意気込むのであった。
ニック・フューリーの逆襲!シカトすんなガキ!
新たな敵の襲来を確信していたS.H.I.E.L.Dを率いるニック・フューリーはスタークの後継となるピーターに協力を仰ぐ。異次元からから来たミステリオという新たなヒーローと共に戦う準備を進めていた。しかしピーターはその重圧から決心がつかず、ヒーローとしての自分、恋を成就させたい自分、全てが中途半端でどっちつかずな行動を繰り返してしまう。ニックの連絡をシカト、から回る恋心。MJの心は離れていくように思える。しかし何とか連絡をつけたニックはピーターにトニーの形見を託す。それはアイアンマンの後釜だと確信したトニーがピーターの為に作った超ハイテクAR搭載のメガネ「E.D.I.T.H.」だった。そしてミステリオの世界を滅ぼしたという火や水や土などの自然の力を動力源とする「エレメンタルズ」なる巨大な人型の怪物との戦いでピーターは後手後手になり、間一髪のところをミステリオに助けられる。
俺なんかにトニーの代わりは務まらないんじゃ!ピーターの葛藤
助けられてばかり、から回るばかりのピーターは苛む。俺なんかにトニーの代わりは務まらないんじゃないか。ミステリオがいれば十分なんじゃないか。そう考えたピーターはひとつの結論を導き出し、重大な決断を下すのだった……。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』感想
私とMCUシリーズ
わたくしウチダ、もともとヒーロー物全般が苦手なの。どちらかと言うとリアル志向なストーリーを好むからだ。派手なエフェクトをばんばんに使い、ダサいコスチューム、各キャラの力関係が飛躍し過ぎていて誰がどれだけ強いのかよくわからず、ナメック星以降のドラゴンボール状態なストーリーに創作の美学はない、と心のどこかで蔑んでいた自分がいたのは否めない。
そしてMCU作品は特に最初の印象が最悪だった。というのも入り口が『アベンジャーズ』(2012)でどのキャラになんの知識も愛着もないウチダにとっては微塵も魅力を感じることができず、アクションも凡庸に思えて、何で世間ではこんなに盛り上がっているのだろうと「周りが熱狂すればする程自分は冷めていく」の法則によって嫌悪すら抱いたものだ。しかし我慢して(笑)魅力を理解しようと時系列通りにシリーズを踏襲した結果、作品ごとにクオリティの偏りは感じるものの、初代『アイアンマン』(2008)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)で初めてこのシリーズを面白いと感じ、インフィニティウォー(2018)からのエンドゲーム(2019)の流れで自分も無事に熱狂していた次第です。
エンド・ゲームが全くエンドではない件
さて、今作はあのアバター(ジャームズ・キャメロンは俺達の心の師でお馴染み)をも超える興行収入を叩き出して稀代の名作となったエンドゲームの続編とあり、どうせ小ぶりな出来になるんだろうと高を括っていた。内容に関しても宇宙をも巻き込んだ壮大なスペクタクルであった前作までとは打って代わり、話の主軸となるのがいち学生の青臭いラブストーリーとあって随分スケールダウンしたものだと「申し訳程度に練って適当に作った作品なんでしょ。どーせマーベルのブランドで儲かるんだしよかったね、ふーんだ」と全く期待していなかった。
ところがどっこい、あのアベンジャーズ嫌いなおじさんはどこ吹く風、今作も無事に熱狂してまいりました。むしろウチダの中ではエンドゲームより好きかも。何故ならば全員が主人公なエンドゲームと違い、各キャラの役割が明確であり、ストーリーの主軸が強固でわかり易いからだ。逆に言えばエンドゲームではオールスター状態でよくあそこまで全員に見せ場をバランス良く振り分けて面白くできたものだと再度、感心させられた。やはり主人公はひとりが基本である。
ここが良かった3つの要素
何が面白かったのか?上映終了後の興奮冷めやらぬ内に近所のベローチェでMacを広げてドヤ顔しつつも熟考しました。
- 進化したスパイダーアクション
- コメディ映画も真っ青なお笑いセンス
- 的確かつ入念なキャラ立て
凄い月並みな意見でスイマセン。
進化したスパイダーアクション
高層ビル群をかいくぐってピョンピョンするスパイディーにはいい加減飽きたよと突き放すなかれ。
序盤に展開されるベネチアでの戦闘シーンでは、水上より突き出す時計塔、いたる所に架かる橋、行き交う無数の船、水の都と言われる所以であるその街並み自体が新鮮であり、従来の大都会とは一風変わったロケーションを縦横無尽に立ち回るスパイダーマンはまた一味違った趣がある。
終盤には大量のドローンを使った空中戦、最新の3D技術で展開される敵の幻影内での空想アクション、どこを切り取っても何かしら新しい試みが行われている印象を受ける。それがまたこちらを飽きさせぬ要因となっている。
コメディ映画も真っ青なお笑いセンス
アクションとコメディという一見相反する要素を適度に配置していくことにより、お互いがお互いの要素を引き立てる重要な役割を担うことはアベンジャーズファンなら周知のところ、今作でも健在だ。劇場内でも何度となく笑い声が上がっていた。
的確かつ入念なキャラ立て
ピーターだけでなく、MJ、ハッピー、ネッドと実に多くのキャラが魅力的かつ入念に描かれている。またジェイクギレンホールが大当たりのはまり役であったのは誰も異論がないのではないか。したたかさ、ずる賢さ、執着心、復讐心と言ったこのキャラを象徴する負の感情が、あの面長の顔に光る鋭い眼光に憑依していた。
この多くのキャラクターが魅力的なのは、アベンジャーズのように全員主役級のキャラクターありきで創られたストーリーとは仕組みが違う。あくまでピーターが主人公であり、彼を中心としたストーリーに沿って各キャラが創り上げられている、ストーリーありきでのキャラクタークリエイションだ。だからこそ無理なく、無駄なく各キャラクターが引き立っていて相互に支え合っていてそれがストーリーを昇華しているといえる。
逆に言えばアベンジャーズはあそこまで主役がひしめき合っているにも関わらず、破綻しない程に全員に見せ場を作ってしかも全世界から支持を受けているのは狂気の沙汰と言える。誰がここまで無理矢理な設定を類稀なエンターテイメントに昇華できようか?やはりアベンジャーズは化物である。
個人的にここがこうだったら……な点
ピーターとMJとの間にギクシャク感やわだかまりをもっと燻らせてもよかったかなとも素人ながらに思ったのは割とすんなりとMJがピーターの協力者になった故だ。ピーターが中盤にトニースタークの後継であることへの葛藤、壁に突き当たってそれに追い討ちをかけるようにMJに見放されるようなフラグがあったらさらに終盤への布石となり、二人が結ばれる感動がましたのではないかと。
滅茶苦茶な設定はもはやお家芸
このシリーズに宇宙の話が持ち込まれた時から(いやそれ以前から?)パワーバランスも世界観もクソもなくなっているがもはや何でもありという世界できちんと楽しませてくれるってのは逆に凄い。普通はどっからどこまでがキャラクターのピンチに当たるのか許容範囲が伝わらなくなり、ストーリーが破綻すると思われる。今作も敵の正体なんかを筆頭に、なかなかの破天荒シナリオを遺憾なく発揮しているがそれを「んなアホな」と冷めさせない程度に魅力的に仕上げている(誤魔化している)点はさすがMCUといったところか。
完全にIMAX推奨
観るなら2Dか3DかIMAXか?最低でも映画館推奨なのは観た方ならば意見が一致するところではないか。自宅で観るまで待つなんてもったいなさすぎる。ウチダとしては完全にIMAXか3D推奨。見比べたわけではないがIMAXで観たからこそ圧倒された部分は少なからずあったと思われる。
シリーズ中の関連作品
より楽しみ、世界観を知りたいという方に向けて本作に関連度がある順に4つ上げてみた。
- 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)
- 『アイアンマン』(2008年)
- 『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)
- 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 (2018年)
まあ完全に独断&偏見によるものです。本作がエンドゲームの後日譚なのはいわずもがな、その内容に関わるセリフも多く出てくるため。そしてエンドゲームを観るなら先にインフィニティ・ウォーを観るべき、という考えのもとにエントリー。また、本作のストーリーはMCU処女作である『アイアンマン』にも深く関わっている。
終わりに
ウチダ評価
5点満点中4点:
マーベル作品を観るか否かで必ずと言って良いほど話題になるのが過去の作品を踏襲すべきか?という点である。観なくて良いです。本作はMCUの中でも特に単体でも楽しめるであろう程に魅力があり、そこで二の足踏んでしまうくらいなら今すぐスマホでチケット発券予約しちゃって下さい。
フェーズ3最終章を終え、遂に新しいシナリオへと突入するマーベルシリーズ。またしっかりと思わせぶりな終わり方で締めくくられており、エンドゲームで完全燃焼したと考えていたのはウチダの錯覚だったようだ。アベンジャーズ、まだまだ終わらない。