リアルな世界観とスタイリッシュなアクション、そしてマット・デイモン主演で人気を博したボーン・シリーズ。最初の三部作に加え、スピンオフでジェイミー・レナーが主演した「ボーン・レガシー」に続くシリーズ5作目となる今作。大分いい歳になってしまったマット・デイモンだがその切れ味や如何に?新ヒロインのアリシア・ヴィキャンデルちゃんが新風を吹き込むか!?尚、ネタバレあり。
『ジェイソン・ボーン』作品情報
製作国 | アメリカ |
ジャンル | アクション |
日本公開日 | 2016年10月7日 |
監督 | ポール・グリーングラス |
キャスト
ジェイソン・ボーン/マット・デイモン(平田広明)
ロバート・デューイCIA長官 /トミー・リー・ジョーンズ(土師孝也)
ヘザー・リー/アリシア・ヴィキャンデル(竹内絢子)
アセット(作戦員)/ヴァンサン・カッセル(向井修)
ニッキー・パーソンズ/ジュリア・スタイルズ(沢海陽子)
アーロン・カルーア/リズ・アーメッド(川田紳司)
クレイグ・ジェファーズ/アトー・エッサンドー(英語版)
エドウィン・ラッセル情報長官/スコット・シェパード(英語版)
マルコム・スミス/ビル・キャンプ(英語版)
クリスチャン・ダッソー/ヴィツェンツ・キーファー
リチャード・ウェッブ/グレッグ・ヘンリー
バウメン/スティーヴン・クンケン
※()内は日本語吹替
『ジェイソン・ボーン』あらすじ
“ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)が消息を絶ってから何年もの歳月が経過したある日、世間から姿を消して生活していたボー ンの元に、CIAの元同僚であるニッキー(ジュリア・スタイルズ)が現れる。彼女は、「CIAが世界中の情報を監視・操作する事を目的とした、恐ろしい極秘プログラムが始動した」という情報を告げ、さらにボーンの過去にまつわる「衝撃的な真実」を明かす。そしてその真実は、新たな戦いの始まりを意味していた―。ボーンは再び姿を現すこととなり、追跡を任されたCIAエージェントのリー(アリシア・ヴィキャンデル)は、彼が最も求めているものを提供すれば、再びCIA側に取り込めるのではないかと考え始める。
公式サイトより引用
『ジェイソン・ボーン』感想
お馴染みのゆらゆらカメラワーク
- ド迫力カーチェイス
- ワクドキな追走劇
- スタイリッシュな格闘アクション
ボーン・シリーズの見どころが今作も健在。追われる者の不安を煽る小刻みに揺れる視点、アクションシーンに突入するや否や目まぐるしく動き回るカメラワーク。観客のハラハラ感を煽る秀逸な演出はボーンシリーズ通じての魅力であることは間違いない。
宿命的対決~ド迫力カーチェイスでお腹いっぱい
ボーンとロバート・デューイの対峙シーン、また、ボーンがヘザー・リーの運転する車に突如乗り込んで直接やり取りするシーンなども同じく、これまで間接的にしか絡んでいなかったメインキャラクター達が直接に、そして宿命的に対峙するシーンというのは相も変わらずわくわくする胸熱な展開だ。
加えてこれでもかという程ぶっこんでくるアクションのボリュームたるやシリーズ最大級と言ってもいいのではないか。ボーンとデューイ長官の対峙がピークかと思いきや、更に敵エージェント・ヴァンサン・カッセルとの最終決戦が延々続く。もうお腹いっぱいである。
アセットがSWATの装甲車両で一般人の車をぶっ飛ばしながら突っ込むシーンは、映画館であったならどんだけの迫力であっただろうかと想像せずにはいられない(自宅のPCで観ました…)。
IMAXで観ていればあるいはもう少し好印象を抱くこともあったかもしれない。
デジャヴ要素満載・代わり映えしない…
しかし・・・代り映えしないのだ。
CIAの厳重な監視、追求をボーンが超人的な能力を駆使してかいくぐるという下り、シリーズを通じて繰り返してきたがこの期に及んでまたこのパターン!?と、突っ込まずにはいられない。
三部作最後の『ボーン・アルティメイタム』ではロンドンの混雑する街中、ボーンがCIAの裏情報を暴露せんとするサイモン・ロスを守りながら進んでいくシーンは名場面かつ大好きなシーンのひとつ。
しかし今作でも、序盤にボーンがニッキーを連れて逃げるシーンに加え、中盤でボーンが父親の真実を知るためにある人物に接触を図ろうとして街中でCIAと交差する下り、パターンがこれまでとほぼ一緒。
ボーン追跡を指揮する、ノア・ヴォーゼン(デヴィッド・ストラザーン)がロバート・デューイ局長(トミー・リー・ジョーンズ)に、CIA内部で対立・孤立していくパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)がヘザー・リー(アリシア・ヴィキャンデル)に入れ替わっただけのキャラ配置、デジャヴである。
ボーン・シリーズの醍醐味ここにあり!と、うきうきできないのは何故だろう?流石に5作品も同じことを繰り返してきてマンネリ気味なのもある。そして次の項で述べる要因もまた大きい。
老けたボーンが絵的にきつい
加えて主役のマット・デイモンがだいぶ老けてしまい、絵的にちょっと厳しい。三部作ではまだピチピチの若手だったのも手伝い、どこを切り取ったって絶対的とも言えるかっこよさがあった。ため息が出るほどに。しかし今作はその当時とのギャップもあってか彼の顔がアップになる度、違う意味でのため息が出てしまう。
加えてボーンの対となる敵役、CIAロバート・デューイ局長を演じたトミー・リー・ジョーンズももはやおじいちゃんと言っても良い頃合い、顔もしわくちゃなブルドッグ状態である。いや渋くてかっこいいけどね、老け顔が目立つキャストばかりで重苦しい。
「新風」ヴィキャンデル
そんなむさ苦しさとオジン臭さ溢れるメインキャストにフレッシュな新風を注ぎ込むのが女性CIAエージェントのヘザー・リーを演じたアリシア・ヴィキャンデルちゃんである。
可愛らしいルックスとは対照的に常に無表情で冷静沈着なクールビューティーといった役柄で彼女が上司となってあんな風に罵ってくれたらどんなにか彩られる人生であったろうかと勘ぐらずにはいられないのが男の性である。え?あ?俺だけ?
彼女の過去作品は『エクス・マキナ』しか観たことがなかったが、無機質なロボットでありながらも感情が芽生え、さらに腹の中にいちもつ含ませるような難しい役を見事に演じてみせ、可愛らしいルックスを携えながらも超演技派、超技巧派であるという、その印象は強烈であった。
そして彼女の存在は『ジェイソン・ボーン』でも大きい。おっさんだらけのむさ苦しい空間に一縷の華を咲かせている。アスファルトに咲く花のように。しかし、彼女がシリーズ通じて一、二を争う美女(競争相手はフランカ・ポテンテとレイチェル・ワイズ)とはいえボーン劣化ダメージの作品へ及ぼす被害は、それだけじゃ癒せないのだよワトソン君。先述の通り、キャラもパメラ・ランディやニッキー・パーソンズと丸かぶり、やはりこのシリーズはボーンにおいてボーンに終わる、ボーンが全てなのだよワトソンくゅん!!
提案1・敵アサシンにビッグキャスト起用案
もし続編があるのならば…。
CIA長官など敵陣営の指揮を取る役どころにはビッグキャストが割と多いのだが(トミー・リー・ジョーンズ、エドワード・ノートンなど)敵の殺し屋役がいまいち印象が薄いのがこれまでのボーン・シリーズの特徴ある。
とうに佳境を超えてしまったシリーズに新鮮味や話題をもたせるにはマット・デイモンの対となり、バッチバチの戦闘を演じさせる殺し屋役に旬の俳優を起用してビッグスター共演の名目でプロモーションするしかないのだよ。
ジェイミーレナーを再び出してボーンと対決させるのもおもしろそうじゃないか。クリス・ヘムズワースやクリス・エヴァンスなどの旬なアヴェンジャーズ系男子か?はたまたブラピかレオ様?アクションと言ったらやはりジェイソン・ステイサムか?
……いうて今更このシリーズに乗り気な人気俳優はもうおらんかなあ……。
提案2・最終奥義は女性アサシン
もはや手遅れ感は感じるが「男の超人役でマンネったら女性案を起用する」の法則を元に(ターミネーターに準ずる)ボーンのように超人兵器として国家に作られた女性殺し屋案、いかがでしょう?ただしリアルなスタイリッシュアクションがウリなだけに中途半端な女優に中途半端なスタントを演じさせたら信用ガタ落ち間違いなしである。スカヨハとか出ないかなあ(超絶無理)。
終わりに
ウチダ評価
5点満点中2点:
まとめです。
まとめ
アクション自体が劣化したとは思わないが、おんなじことをフレッシュなき俳優陣と設定でやっていたらそらきつい。
もう過ぎ去りつつあるボーンシリーズの栄光は思い出として取っておき、新しき未来に目を向けるとしようか。そんなベテランの渋みが出てきたマット・デイモンの最新作は2020年1月に日本公開予定の「フォードvsフェラーリ」。こういったカーチェイスもの(?)をハリウッド映画で観た記憶があんまないので楽しみですな。更にクリスチャン・ベールとの豪華共演、これこそがボーン・シリーズでみたかったやつなのか!?