「胸ぐらを掴まれた時」というのは割と誰にでも起こりうるシュチュエーションだ。街で喧嘩を売られる、職場で揉める、などなど。そんな時に掴まれた手を振りほどくテクニック・対処法をお伝えしたい。
また、胸ぐらを掴む行為は暴行罪に値するのか?そしてどこまでの反撃が正当防衛の範囲内になるのか?という点にも触れている。
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巻きつけて解く【サンボ】
これはサンボの出稽古で習った技をアレンジしたものだ。
メモ
本来であれば、掴んだ手を巻き込んだ拍子にそのまま足を取りに行く。そして片足タックルの態勢に移行する。
私の場合だと稽古で相手に道着を掴まれた時も、この技術でほぼ切り離すことができている。
いくつか要点があるので順を負って説明したいと思う。
step
1脱力して重心を下げる
いきなり腕を回さず、体を沈み込ませて反動をつける。
step
2全身を使って腕を旋回
腕だけ回しても十分な力が生まれないので、全身を大きく使って旋回させること。そしてスピードと勢いが大事。
相手の掴んだ手に自分の腕を巻きつけていくイメージ。
隙間なく巻きつけるのがポイント。ゆるゆるだと効果がない。
すると、相手は腕の内旋に限界がきて掴んでいられなくなる。
振りほどいても終わりではない
再び向かってくることが予想されるので、次なる対処が必要になる。
- 距離を取る
- 逃げる
- 助けを呼ぶ
あくまで掴まれた状態を切り抜ける技であることに注意しよう。
指を掴む
「指を掴む」行為は護身において非常に有用なので憶えておこう。
当たり前だが、1本の指と手なら絶対に手の方が強い。指は脆く、掴まれたまま反対方向に全体重をかけられれば簡単に折れる。
狙い目は親指である。何故なら親指は独立しているので掴みやすいのと、意外と力が弱い。
指を取る際は、小指・薬指を隙間に食い込ませて剥ぎ取る。指を掴んだら関節の反対方向に思い切り力を加えれば、相手は掴んでいられなくなるのだ。
メモ
掴む力というのは小指・薬指を中心に発生する。カバンなどを持つ時、どうやって取っ手を握っているか?考えればおわかり頂けると思う。
腕や手首を掴まれたら?
やはり「旋回して巻きつける」に近いテクニックで解くことができる。むしろ「服を掴む」より「肉体を直に掴む」方が力は入らないので解きやすい。
著・伊藤祐靖「女性のための護身術」より引用
上記は、元自衛官で軍事コンサルタントをされている伊藤祐靖氏の著書に書かれていた技術。
- 掴まれた手を内側から巻きつけるように旋回させる
- 相手は腕の内旋運動が限界を超えて手を離す
やはり大事なのは腕の力だけで回すのではなく、体全体を使うこと。それをするとしないでは、生み出されるパワーに圧倒的な差がある。
また、指を掴むのもやはり有効だ。指掴みは割とどんな場面でも使える。
ちなみに上記の著書は指を掴むテクニックに関しても満載。護身に興味を持たれている方は是非読んでほしい一冊である。
合気道の技は使える?
結論を言えば、練磨・研鑽を重ねた技なら使えるし、そうでないなら使えない。中途半端に練習した程度では、ガチの取っ組み合いでは役に立たない。
それは合気道に限らずどんな格闘技・護身術も一緒だ。なかには「か弱い女性でもすぐ護身に使える」というのを謳い文句にしているケースもあるが、実際にはなかなか難しいだろう。
基本的には、実戦に使えるようになるにはそれなりの練習と心構えが必要だと考えておこう。
正当防衛の考え方
そもそも胸ぐらを掴むことは暴行罪に値するのか?そしてどの程度の反撃なら正当防衛が成り立つのか?これらの点について解説していきたいと思う。
暴行罪になるの?
胸ぐらを掴む行為は、暴行罪に値すると言われている。
暴行罪は傷害罪よりも刑罰が軽くなっています(2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金,又は拘留・科料)。ただ,相手の胸ぐらをつかむ行為や相手を突き飛ばす行為だけでも犯罪が成立してしまいますので,自分では犯罪のつもりがなくても,いきなり警察の捜査を受けてしまうことがあります。
正当防衛の範囲とは?
正当防衛の要件は以下だ。
- それが不正の侵害であるのか
- 急迫性はあるのか
- 防衛行為の必要性があるか
- 防衛行為の相当性があるか
- 防衛の意思はあるか
どこまでの行動がこれらの要件に当てはまるのか、定義は曖昧でその時々の状況によって判断されるので難しい。
すごく雑に言えば「相手の攻撃を超えるような反撃は成り立たない」と捉えられる。
だから胸ぐらを掴まれた程度では、正直まともな反撃は許されない。打撃を加えれば過剰防衛になる可能性が高いからだ。
ましてやそれで外傷(鼻血、切り傷、打撲痕など)を残してしまえばこちらが圧倒的不利である。
だから考え方としては、
- 相手に危害を加える前提で反撃しない
- 反撃ではなくその場を切り抜けることが第一
これをベースに考えた方が良い。掴まれた手を振りほどけたら、逃げるなり助けを呼ぶのが最善の策だ。女性であれば特に。
反撃をするなら外傷を残さない
胸ぐらを掴んできた相手に反撃をするならば、外傷を残さずに相手を制すること。その場合は打撃技より組技が有効である。
例えば、投げ技に自信があるなら怪我をさせない程度に「こかす」くらいOK。あるいは立ち関節も非常に有効だ。(もちろん折ってはならない)
証拠を残す
録音・録画など証拠を残す選択肢も考えると良い。後に警察沙汰になった時、裁判沙汰になった時に有利に働くのは言うまでもない。
街で酔っぱらいに絡まれる程度ならまだしも、職場などで上司に掴まれるケースも中には考えられる。
そのような時は力で解決を図るより法的に解決を図る方がスマートだ。何故ならお互いの素性を知っているので下手に立ち回ると簡単に足がつく。
【経験談】現行犯逮捕はありえる?
仮に街で絡んできた輩に胸ぐらを掴まれたとする。警察が駆けつければ、その掴んでいる人間を暴行罪で逮捕するのか否か?
結論を言えば状況によるが、例えば大人の男性同士の掴み合いくらいだと止めに入るだけで終わることが多い。
しかし女性や子供が大人の男性に掴まれていたら現行犯逮捕も十分ありえるだろう。
つまり当事者同士の力の差・深刻度によって判断されやすいことは言うまでもない。
私の経験談
実際に街でチンピラに因縁をつけられ、胸ぐらを掴まれていたところに警察がやってきた経験がある。
警察は止めに入ってチンピラをなだめるだけで終わった。まあ…そらそうだよね。
いくら暴行罪とはいえ、胸ぐらを掴む程度でいちいち逮捕していらんないというのが実情だろう。

だが先程も述べた通り、女性や子供が被害者だったり、あるいは職場のトラブルだったりすればこの限りではない。
まとめ
胸ぐらを掴まれた時に有効な技術は以下。
- 腕を旋回させて相手の手に巻きつけて解く
- 指を掴んで引き剥がす
そして以下のポイントにも注意。
- 胸ぐらを掴む行為は暴行罪に抵触する
- 相手に危害を加えるつもりで反撃しない
- その場を切り抜けることを前提に考える
知識を身に着けただけで実践できる技は存在しない。だが「指掴み」などは知っているか知らないかだけでも大きな違いがあるだろう。
ちなみに護身に関しては以下の記事も参考にしてほしい。
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